女王様の愛虐

  • 2013/12/09(月) 18:00:50

女王様の愛虐

北林 一登
春川ナミオ・画

美貌の受刑者

「私ですか?殺人と死体遺棄だわ」
 私の質問に対して、女は事もなげにこう答えた。
「刑期は?」
「十年よ。もう五年六ヵ月いるから、あと四年とちょっとね」
ここは和歌山にある女子刑務所の面会室の一室である。窓からは晩秋の木洩れ日が薄い日ざしを投げかけていた。
男の受刑者と、女の受刑者との違い、そんなことが判ればと思い雑誌社の依頼でここを訪れた私は、意外にあっけらかんとした彼女の返答に、こちらがドギマギしてしまった。
男は殺人をすると、夢でうなされたり、苦しがったりするが、女は割りと平気だと聞いたことがある。
しかし私の目の前に坐っている女性は、平気というよりも、自分の殺人、死体遺棄という行為に、全然罪の意識を持っていないようにみえる。
いやむしろ、彼女の遠い所を見るような目付きには、昔の楽しい出来事を思い出しているかの如くにさえ見えるのだった。
「どんな事情で、殺人を犯したのですか。もし差支えなかったら話してくれませんか」
あんた小説家だってね。小説のネタにするんでしょう。いいわ、暇つぶしに私のことを話してやるわ。でもうまい小説に書いてよ」
女は残酷なチャイルドベビーのような顔を少しゆがめて、嘲笑うようなほほえみを見せた。

私は子供の時から女餓鬼大将でね、男の子と喧嘩しちゃよく泣かしたもんだわ。
それもただ、泣かせるだけじゃつまらないのよ。降参した相手をじわじわなぶるのが好きなのね、小さい時から変質者みたいな素質があったのかしら。
喧嘩の相手もなるべくかわいい男の子を選んだわ。
何か難癖をつけて、喧嘩の種をつくるの。
相手のプライドを大勢の前で叩き潰してやると、私が女だけにたいてい怒りで喧嘩に乗ってくるわ。
そんな時、そこではやらないで、放課後学校の裏山で、一対一の勝負をしようと提案するの。
男の子は、引込みがっかなくなって、皆の手前虚勢を張ってOKするわ。
学校の裏山には、町の鎮守様があってね、そこから町全体が見渡せるいい場断なのよ。
その神杜の裏手の草っぱらで、私達は取っ組合いの喧嘩をするの。
負けないわ。大体の相手力具合いは判ってるし、私は喧嘩馴れしているから、相手が女だと思って加減している間に男の股間の物をカー杯蹴り上げてやるの。
男の子は前を抑えてうずくまりてしまう。
そうしたら、相手の腕をとって後ろに捻じ上げて抑えつける、ああ思い出しただけでも昴奮するわ。
男が私の膝下でひいひい言っているのを、委細構わずに懐から紐を出して、相手の手首を後ろで交差して縛ってしまうのよ。
弱い男は、この辺でもうめそめそ泣き出しているわ。
でも面白いのはこれからなのよ。

乳首責め

 手が使えなくなった男は、弘の捕虜みたいなものよ。
足だけで、まだ抵抗する奴もいるけど、私が足でそいつの顔を三、四回蹴とばしてやれば、抵抗をやめて涙声で許しを請うわね。
許してなんかやるもんですか。まず私は、相手を裸にすることから始めるの。
解剖ごっこという遊びがあったけど、あれみたいなものよ。
上着、肌着、ズボン、パンツと丸裸にしてやると、まだ毛も生えていない下腹部が見えてきて.オチンチンがうなだれているの。
可愛かったなあ。
相手をそんな惨めな恰好にしておいてから後手縛りの繩尻をとって、裏山を引き回してやるの。
引回しが終ったら、木の根っ子に紐の先をくくりつけて、動けないようにしちゃうの。
次になま白い肌を、つねりまくってやるとか、木の枝の鞭で、肌が赤く腫れ上る程叩いてやるとか、苛め方は色々あるものね。
でも私が一番好きなのは、乳首責め。
男の乳首なんて、あるかないか判らないほど小さいでしょう。
でもあそこは性感帯であると同時に凄く敏感な所なのよ。
弘の尖った爪で、男の乳首をぎゅっと挾んでやるの。
つねられても、叩かれても泣かなかった強情な男の子でも、これをやると目からボロボロ涙をしたたらせるわ。
「どう強情はってないで、あやまりな。永久に私の子分になりますって誓うのよ」
「……」
「口なきかないつもりね。ようし、お前の乳首の先を。私の爪でもぎとりてやる。段々痛くなるわよ」
「いたIい。おかあちゃーん」
「馬鹿、こんな所へおかあちゃんが来るかよ。私の子分になるか、どうだ」
「御免よう、許してよ。子分になるよう」
男なんて、もろいものね。大抵この乳首責めで、降参してしまい、泣いて私に駝びて、私の子分になることを誓わせられるの。
私、なんだかこんな話をしてるだけで、濡れて来ちゃった。
そうだ、濡れてくるっていえば、あの頃も男の子を苛めながら体が痺れるくらい昂奮したものだった。
それがね、私が昂奮するばかりでなく、苛められてる相手の男の子も、乳首責めをされると、涙流して痛がるくせに、坊やの坊やが勃起してくるのよ。
それがまた面白くて、やみつきになったのね。
裏山に夕闇が訪れる頃、私は完全に私の奴隷となった男の子を従えて、意気揚々と山を降りるの。


アスパラガス

 Kという男の子がいたわ。弱いくせに小生意気で、女の子に悪さばかりするので、皆の
鼻つまみ者になっていたの。
その悪さというのが悪質なのよ。通りすがりに、女の子の乳房をタッチしてゆくとかスカートめくりはしょっ中だし、いわば子供の痴漢ってとこね。
こんな時、女はいつも泣き寝入りでしょ。
私は許せないの。
こういう奴は、黙っているとニ度三度と同じ悪さをするわ。
私一人でもやっつけてやる、そう考えたのね。
Kを裏山へ呼び出すと、私の強いことを知らないKは、のこのことやって来たわ。
「今日はお前の悪い癖をこらしめてやるわ」
「女のくせに生意気な、お前のあそこも、砂で埋めてやるぞ」
今までのもやしっ子と違って、悪だけに少し手ごたえはあったわ。
はじめのうちは形勢不利で、危く私のほうが縛られそうになっちゃった。もし縛られたら、あそこに砂を入れられるのかと思ったら私も必死になって、Kの股間の物をぐいと握って、金輪際離さなかったの。
これにはさすがの彼も参ったらしくって、最後は私の軍門に降ったわ。
例によって後ろ手縛りにした上、裸にして引き回し、木にくくりつける所までは、これまでと同じ。
そのあとがちょっと違うの。
木の棒で叩いてやったり、乳首責めをした後で、彼のビンビンになったおチチンチンの根っこの所をゴム輪でぎりぎり縛ってやったの。
皮をかむってたけど、痴漢の卵だけあってアスパラガスみたいなのが充血して、固くなって突っ立っているさまは、ほんとに面白かったわ。
私にそうやっていじられるってことは、Kにとっても凄い快感があるらしくって、こいつ口惜しそうな顔どころか、涙もこぼさずにニヤニヤ笑っているのよ。
その時よ、私がこのアスパラガスをちょん切ってやろうと思ったのは……。
Kのやつが泣いたりロ惜しがったり、わめいたりしてたら、私もあんな事はしなかったと思うわ。
あいつのニヤついた顔を見ているうちに、猛然と怒りが込みあげてきちゃって、ポケットに入れてあったハサミを取り出すと、パチンと……。
あっという間もなかったわ。
それは本当にアスパラガスのように簡単に切れたのよ。
根っこをゴム輪で結んでいたので、血もそれ程出なかったし、感覚がしびれていて、痛みもたいしたことはなかったらしいの。
でも本人は驚いたわよ。
切った私もびっくりしちゃったもん。自分でびっくりしてれば世話ないけど。
そんなものよ犯罪なんて。
慌ててくっつけようと思ったけど、もうダメよ。
Kのやつは、火がついたようにわあわあ泣くし、私は縛ってあった繩をほどくと、一目散に家へ逃げて帰ったわ。
それが私の犯罪第一号でね。もちろん未青年だから罪にはならなかったけど、とんでもない非行少女として、警察に補導され、練監送りよ。
アスパラおまあって仇名がついちゃって、練監では結構幅がきいたもんよ。
おまあって私の名前よ。魔美っていうの。
そのKって男の子?
その後、人が変ったように真面目になってね。
教会に入って、今牧師をやってるって。
面白いじゃん、痴漢の卵が牧師よ。
私のおかげで更生したようなもんよ。


トルコの女王

 学校を出てからは、ウェイトレスをやったり、キャバレーに勤めたり、ピンクサロンで働いたり、そして最後はお定まりのトルコ風呂。
ここが一番よかったなあ。
トルコでも私にはどういうわけか、男の子分みたいな、奴隷みたいなのができてしまうのよ。
あれどうしてかしら?
大体トルコに来る客なんて、八十%はマゾだって何かの本に書いてあったけど、ほんとね。自分は寝たままで、女に自由に体をいじられて射精するなんて、M的だものね。
むろんマッサージなんかしてやらない。
じゃお客は何をするかっていうと、勝手に風呂に入って、自分で体を洗うわけよ。
私は煙草すって見てるわ。
それが終ったら風呂場の掃除ね、力を入れて洗わせるのよ。
怠けたりさぼったりしたら、用意しといた鞭でバシバシ叩いてやるの。
掃除が済んだら私が溜めといた下着類を洗濯させる。
こういうことを凄く喜んでやるんだマソ男達は。
全部終ったら御褒美に、タイルの上に仰向けに寝かせて、私のおしっこを顔にかけてやるの。
むろん飲む奴もいるし、シャワーみたいに顔に浴びただけで満足する奴もいるわ。
お金も他の客より余分に払って、土下座して御礼を言って帰るの。
その帰り際に出口の所で頬に一発、ビンタを喰らわしてやると後をひいて、必ずまたやってくるな。
トルコ嬢なら、誰でもこういう客を経験していると思うんだけど、私の場合はとくにそんなのが多いのよ。
奴隷にしてくれって、しつこいのが丁度六人いたもんだから曜日毎に分けてね。
月曜日の奴隷、火曜日の奴隷って指定して、掃除に来させる時間もこっちが決めてた。
だからあいつら、毎週一回判で捺したように正確に私の所へ通って来ていた。
私がトルコ風呂に嫌気がさして、やめてしまってもその連中だけは離れないのよ。
当時、私はアパート住いをしていたんだけど、そこへ集ってきて、相変らず掃除やら洗濯やらをしてくれていたわ。


奴隷誓約書

 私が本格的な別荘暮しを思いついたのは、あの山にこもって事件を起した赤軍派のことを、新聞やテレビで見たからよ。
なる程、冬の別荘は人がほとんどいないのだし、別荘族は金持ちだから、家具や什器類を盗んで売りとばせばいくらかになるだろうし、第一自分達が住んで生活するのにも、空き別荘がいくらでも利用できるわ。
しかしこれをやるためには、ある程度の人数が必要なのよ。
一人で山奥の別荘住いは、不便だし、寂しいし……。
そんなわけで、私は六人の奴隷共をひきつれて、山に入ろうと考えたわけ。
私が六人の豚共を呼び集めて、この提案をすると、皆すっかり乗気になっちゃって、私を女王にして、新しいマゾ天国を冬山の中へつくるんだって、大へんな気の入れようなのよ。
その時、皆がつくって私に差出した誓約書があるの。まだ覚えてるわ。
 一、   私達は魔美女王様のために、たとえ法律を犯してでも`命がけで働きます。
 一、私達は、魔美女王様の御命令には、絶対に服従します。万一これに違反した場合は殺されても異存はございません。
 一、私達は、全財産を魔美女王様に提供し、一円たりとも私有致しません。
 一、私達は、魔美女王様のために働いた労働の対価を、いっさい求めないことを誓います。
 一、私達は、魔美女王様による罰をすべて甘受します。
 一、私達奴隷は、女王様以外の女性と接することは致しません。
 一、私達は、女王様の意志による以外、この会を脱会することはできず、もし女王様の意志に反して脱会しようとした場合は、死罪に付されても異議を申しません。
というわけよ。
まあ奴隷契約書ってとこね。
子分共の名前はね、大政、小政、石松、馬雄、犬雄、豚雄っていうの、面白いでしょう。
私は清水次郎長みたいな女親分だから、子分の三人は、それらしい名前、あとの三人はそ
れぞれの性向を名前にしたのよ。
馬雄は人間馬になるのが好きで、私専用の馬よ。
犬雄は舌を特別に訓練して、私専用のクリニングス用ペットってとこね。
他の奴隷達だって、私の気分の向くままに馬にしたり犬にしたり、豚にしたりしたわ。
私は当時十八か十九になった頃、奴隷達は学生からサラリーマンまで色々よ。
年も十九から四十ぐらいまでいたかな。
そいつらを従えて、山に入った時は、国定忠治みたいな気分がしたものよ。
断りもなく他人の別荘に入って、女王きどりで暮らした半年間、楽しかったなあ。
まず最初の日は、全員にコップを持たせて集め、私のおしっこをそのコップに一杯づつ
入れてやったの。
誓いの盃ね。
親分子分の盃は、お酒よりも女親分のおしっこが最高よ。皆ひと息で呑みほしたわ。
血をすすりあうなんて古いわ。
子分共の体内に、私のおしっこがしみ渡ってゆくのを見ているのって、いい気持ち。


第一の犠牲者

 私は女王様だから別格だけど、全体の番頭格は大政ね。
この男二十七、八歳なんだけど腕っぷしが強くてね。
私には絶対服従だけど他の男達には、にらみがきくのよ。
それにどこで手に入れたのか、猟銃を持っていたから、押込み強盗やるんでも、銀行強盗やるんでも、彼がリーダーね。
私が一番可愛がっていたのは、犬雄よ。
こいつの舌技は抜群でね、今思い出しても体がとろけるようよ。
舌を細く丸めて伸ばすと、子宮の入口まで届くのよ。
あんたできる?
できると思ったらやってごらん。
それでシコシコやられると、男の物なんかどうでもいいと思っちゃうね。
だから私は、年中犬雄をペット犬の代わりに使ってたわけ
それが他の男達には面白くないのね。
私にはこわくて言えないものだから、かげで犬雄を苛めるのよ。
男のくせに、女のくさったみたいなことすると思わない。
それに犬雄って、若くて、郷ひろみのような可愛い男の子だったのよ。
だからよけいに憎まれたのね。
仕事のほうは、まあ順調にいっていたわ。
犬雄を残して、各自山を降りると、それぞれ万引き、かっぱらい、空巣、何でもやってお金をつくってくるわけよ。
その日の稼ぎが、一番多かった奴隷には、私の入浴の手伝いをさせたり、ついでに、私の女の部分を見ながらオナニーをするのを許してやるの。
これがやりたくて、みんな必死になって仕事するのよ。
時には舐めるのも許してやることがあるわ。
犬雄みたいにうまくないけど、これも褒美の一種だから……。
一番稼ぎの悪い奴は、柱に縛りつけて、革鞭で打ってやるの。
最初は私が打ってやってたんだけど、私だと喜んじゃって罰にならないんだなあ、とくに馬雄がそう。
鞭打ってる最中に、勃起してきて、射精するのよ。
こっちは腕が疲れるし、冗談じゃないわ。
それで後では、大政に打たせたの。
こいつは力が強いから参ってたみたい。
私は高見の見物よ。
石松や馬雄は、よく打たれてたなあ。
こういう風にすると、能率はあがるんだけど要領のいい奴とドヂな奴と、大体決まってしまうのね。
大政と犬雄はいつも私の側でかわいがられてるし、他の四人は、私の匂いも嗅がせて貰えないわけよ。
特にドヂの石松と馬雄は、鞭ばっかり貰って、欲求不満になってきたのよね。
二人が逃げる相談を始めたことは、薄々判っていたけれど、確証がないので黙って見ていたの。
大政に話して用心させておいたわ。
月の明るい寒い夜だったな、二人が逃げたの。
それも私の金を盗んだ上でよ。
逃げた二人を追って、大政達四人は一斉に行動を起したの。
猟銃を持っての山狩りね。
結局この馬鹿の二人は、四人の男達にとっ捕って、ぎりぎりに縛られた上、私の前へ引据えられたわ。
こういうのを苛めるのが好きなんだなあ、私は……。
泣いて詑びる二人を、私は許さずに、ニ人共裸にむいて、再び縄で厳重に縛りあげたわ。
「二人の尻に、焼ゴテで私のイェシャルのMという字を焼きつけてやんな」
私はソクソクして命令したわ。
丁座いい焼ゴテは無かったけど、鉄火箸を真赤に焼いて泣き叫ぶ石松と馬雄の尻に押しつけた時、人間の肉を焼くとステーキみたいな匂いがするんだなとびっくりしたことを覚えているわ。
そのあと私は、二人をまだ許さず、寒い戸外の木に縛りつけておいて反省を促すことにしたの。
まさかこれで死ぬとはねえ、私達もよく判っていなかったのよ。
朝起きて戸外へ出てみたら、石松と馬雄は冷たくなって死んでいたわ。
人間って意外と寒さに弱いんだね。
死んだものは、しょうがないじゃない。
私は奴隷達に命じて山の林の中に大きな穴を掘らせて、その中へ二人の死体を横たえたの。私は供養のつもりで、二人の死骸に私の暖いおしっこをたっぷりとふりかけてやったわ。M派の彼らには、これが一番の死出の旅路へのプレゼントですものねえ。


鼻輪責め

 私は奴隷なんて、家畜以下にしか考えていないから、二匹の家畜が死んだくらいにしか
感じられなかったわ。
男達はショックだったらしくて、青い顔して黙りこんでいたなあ。
結局第一の事件が、第二の事件を引起してゆくんだけど、ショックを受けた小政と豚雄
とが組んで、また脱走を企てたわけよ。
これは台所で、二人が相談をしているのを犬雄が聞いてしまって、忠犬ハチ公よろしく御注進に及んだのね。
前の二人は実行段階で、今度の二人は計画段階で捕ったわけなんだけど、警察に密告さ
れる怖れがあったのよ。
二人を裸にして、手錠足錠をかけて正座させると、私が裁判官よろしく、前の椅子に腰
をかけたわ。
「お前達、一体どういう相談をしていたんだい?」
「申訳けありません、このままここにいると殺人罪で警察に捕まるんじやないか、それな
ら早く逃げようって……」
「私達の鉄の規律を破って、逃亡しようとした場合は死刑にされることを知っているね」
「許して下さい、もう二度と致しません」
二人は正直になって平伏懇願しているの。
時折り大政の鞭が、ビューン、ピシャッと二人の背中を打つ音が混じるのね。
「私達の規律を破った者を、許すわけにはいかないわ」
私は表面冷たくいい放ったけど、内面からこみ上げてくるドロドロしたものが、体中を駈けめぐって、自分で自分がよく判らなくなっていたみたい。
きっと顔が真青で、眼が爛々と燃えさかっていたでしょうね。
「犬雄、お前こいつらの鼻に、牛みたいに鼻輪をつけてやりな」
「鼻輪?」
「耳にするピアスみたいな穴を、鼻の中の鼻陵にあけてやるのさ。そこに真鍮の輪っかを通して鎖をつけるのよ。つまり逃げ出さないようにつないで置んだよ」
「判りました。きりで開けましょうか」
「いいだろう。耳のピアスだって、たいして痛くないんだから、心配することはないよ」
手術を命令された二人は青くなったわ。
「牛はみんな鼻輪をつけてるだろう。お前達奴隷は家畜以下なんだから、贅沢言わないで有難いと思いな」
鼻に穴をあけるのは、少し出血したくらいで、たいしたことはなかったわよ。
それに輪っかをつけて鎖の先端を私が握ると、二人の家畜はもう完全に生殺与奪の権を私に握られたみたいになって、シンとしていたわ。
ぐいと鎖をひっ張ってやると、まだ開いたばかりの穴が痛いらしくって、顔をしかめて私の後をついてくる有様の滑稽なこと。
その鼻輪の鎖の先端を天井の滑車に通して吊るすと、全裸の後ろ手錠のままの豚雄と小政は、肉屋の吊し肉のような形で、台所の一隅に立たされているの。
私はそんな二人のうなだれたペニスを、ぐぃっと握って下にひいてやったわ。
きっと鼻が千切れる程に痛いのね、悲鳴をあげた二人の眼尻から、涙が溢れてきて……。
十八、九の女の子に、翻弄されている中年男違の哀れっぽいこと、おかしくって私は逆の意味で涙が出たわ。
「このままの形で、一晩考えな。そしてゆっくり自己批判するんだね」
ピシーリ、ピシャ、おまけに革鞭で尻の皮が破れるほどひっぱたいてやった。
さすがにこの二人は家の中でのお仕置きだったから、死ななかったわ。
私はときおり看視に行って、鞭をあてたりペニスや乳首のあたりをひねりあげて、悲鳴をあげさせて楽しむの。
男を苛めるって、どうしてあんなに楽しいんだろう。
あれだけは、いくらやっても飽きるってことがないね。


人間狩り

 私達の泥棒集団が、警察に掴まったのは内部から密告した奴がいたからなのよ。
誰だと思う?
あの私が一番可愛がっていた犬雄なのよ。
人間って判らないものね。他の奴隷が皆仕事に精を出している時に、あの子だけは私のペットとして手許に置いて、可愛がってやったのに・・・・・・。
窃盗にも殺人にも彼は加わっていないので今の内なら罪が軽いだろうと考えたんでしょうね。
むろん警察は、躍起になって犯罪M集団を探し回っていたのよ。
私達が空き別荘から空き別荘へと逃げ歩いていたので所在不明だったのね。
犬雄が密告さえしなければ、まだ私達は逃げおうせたかも知れないわ。
ほんとに犬畜生にも劣る奴よ、犬雄って・・・。
そして警察にたれ込んだ後で、深夜こっそり豚雄と小政の二人の鼻輪鎖や、足錠をはずしてやって、三人で逃げ出したの。
それを知った私と大政は、すぐに猟銃を持って、山狩りを始めたわ。
何しろ殺しをやっているだけに、逃亡や密告は困るわけよ。
私達二人は、三人を追跡してドンドン走ったわ、私は胸が早鐘のように鳴るのよ。
見つけ次第撃ち殺すという大政の提案に、豚雄と小政は殺しても、犬雄はとりこにしろと女王命令を出しておいたわ。
犬雄の奴、奴隷の癖にこのままあっさり殺してなんかやるものか、捕えてじわじわと嬲り殺してやる。
そんな怒りに燃えてたのね。
まず私が豚雄を見つけたのは、夜が白々と明け始めた頃よ。
名前の通り豚のように太っていたので、他の二人とはぐれて、川のほとりで水を飲んでいたわ。
私は物影からそっと照準を合はせて、彼の心臓を狙ったの。
ズドン! 弾は彼の下腹部を貫いたらしく下半身を抑えたまま、うんうんうなっていたわ。このまま苦しみ続けるのは酷よ。
私は彼に近づくと、銃を彼の心臓に向けたの。
「許して下さい」
虫の息の中で、彼は私を拝んだわ。
「駄目ね、お前はひと足先へあの世へお行き。
私達が行く頃までに、住み良い天国にしとくんだよ」
パシッ! 止めの弾が彼の心臓を貫いて、豚男は死んだわ。
初めて直接手を下して、男を殺したけど、ゾクゾクする程の快感があったのは事実ね。
小政は、大政がどこかで処分してきたので残りは犬雄だけ。
かねて打合わせしておいたさらに山奥のかくれ家へ、犬雄を捕えて連行してきたのは、翌日の夕方の事だったわ。
私の前に引据えられたかつての私のペット犬雄は、真青になってガタガタふるえているの。
私は後ろ手縛りにされている犬雄の顎に手をかけて、ぐいと上を向かしてやる。
「私があんなに可愛がってやったのに。この恩知らず」
「許して下さい、女王様」
「サツに密告したり、罪人を逃がしたり、やってくれたわね」
「……」
恐怖におののく美少年は、もう言葉も出ないの。
「この鼻をそいでやろうか。それとも、この耳を切りでやろうかしら」
「ひえーっ!」
私はその感触を楽しむかのように、可愛らしい犬雄の鼻や耳をもてあそんだの。
「それとも。こいつをソーセージの輪切りみたいに切ってやろうかしら」
彼の股間のものは、恐ろしさに縮み上がっていたのを、私はむりやり引っぱり出して、こすり上げて大きくしてやったわ。
「やめて下さい。もう絶対にしませんから」
「遅いのよ。こうしている間にも、警察が私達のことを探しているわ。見つかる前に、お前に刑を執行しないと私の気がすまないの」
こういうことになると、女のほうが残酷になれるみたい。
大政のやつハラハラしながら私が思いつく残虐刑のやり方を軽くしようと躍起になってるのよ。
結局私も折れて、犬雄の眼を潰して、トイレの便壷の中へ突き落すことで妥協したわ。
ちょうど便器掃除用の塩酸があったから、目薬みたいにして、彼の目を焼き漬してやったの。
泣き叫ぶ犬雄を、便器をはずして、その真下の便壷の中ヘドボン。
そうしておいて、上から私がおしっこをジャーッとかけてやったの。
真暗な便壺の中で、あいつどんな気持ちで私のおしっこを浴びたことだろう。


大政の遺言

 いま想い出すと色んなことがあったなあ。結局私達は警察に発見されて、大政がナイフをふるって抵抗したけど、警察官の一人に軽い怪我をさせただけで捕ってしまったのよ。
五人もの男の殺人と死体遺棄だから、私もこれは死刑か無期になるんじゃないかと、覚
悟したわよ。
それが十年で済んだのは、大政が罪を一人でかぶってくれたからよ、まあこんなケースの時、たいてい男が主役で女は彼の情婦で脇役ってのがきまりでしょう。
その直後、大政は拘置所の中で、首吊り自殺をしてしまったわ。
あの時だけはさすがに私もショックだったな。
彼の遺書みたいなもの、後で見せて貰ったけどこんな意味のことが書いてあったわ。
「裁判長殿、検事殿
 私は今、自らの命を断って私が犯した罪の償いをしようと思っております。そこで死ぬ前に、真実を述べておこうと思うのです。今回のことは、かねて申上げておりますように私一人が計画し、実行したことであり、魔美様には全く責任のないことを重ねて理解して頂きたいのです。
 私達六人は、魔美様の熱烈な崇拝者であり彼女のために、いつでも死のうと思っている人間の集りでありました。最初は何とか協同生活が維持できたのですが、。そのうちに私の嫉妬心から他の男達が邪魔になり出したのです。独占欲というのでしょうか。私は、私だけの魔美様であってほしかったのです。
 私は三人を殺しましたが、これは全く私の嫉妬心、独占慾から出たものであり、魔美様にはいっさい関りのないことであります。どうぞ彼女を無罪にして釈放して頂きたいのです。
 ただ。これだけは言っておきたいのです。私達の一人一人は、魔美様の為に死ぬことに本当の喜びを感じていたと云うことです。いま私も、喜びにふるえながら死につこうとしております。私は恍惚として死につこうと思います。一人の男性が、一人の女性のために総てを捧げて死ぬという、これほど素晴しいことが人生にまたとあるでしょうか。
 魔美様、それではお元気で。いつまでもおすこやかに、お美しく……。さようなら」
そんな遺書だったわ。男なんてみんな単純でかわいいもんね。
 秋の陽はつるべ落しとか………ここ女子刑務所の面会室も、いつしか夕闇が忍び寄ってきていた。
そろそろ面会時間も無くなろうとしている。
可愛らしい顔をしたこの美人の、どこにそんな残酷さが秘められているのか、と不思議に思われてならなかった。
男の魂吸い込んでしまうような妖しい光をたたえた女の目に別れを告げて、私は脱穀のようになった自分を感じながら、重い足どりで帰途についた。
私もあの人のために死にたいと思いながら・・・・・・。

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